最近話題の木造ビル なぜ、今になって木造ビルが注目されているのか?

2024年5月6日 15:55

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記事提供元:エコノミックニュース

現在、日本を含む120以上もの国や地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げている

現在、日本を含む120以上もの国や地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げている[写真拡大]

森林資源の循環やCO2排出量削減など、カーボンニュートラルの観点から、中大規模の木造建築への期待が高まっている。

 現在、日本を含む120以上もの国や地域が、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げている。日本では2015年に、2030年度に温室効果ガスを2013年度比26%削減とする目標を掲げたが、2021年4月にはその目標をさらに大幅に引き上げ、2030年に2013年度比46%削減と上方修正することを表明している。この大胆な目標更新に対し、専門家の中には懐疑的な意見も少なくない。ただのパフォーマンスで終わってしまえば、彼らが危惧するように世界各国からの信頼を失うことにもなりかねない。しかし、見事達成できれば、日本の存在感を大きく示すことができるだろう。そんなカーボンニュートラル実現へのキーポイントの一つが、中大規模の木造建築なのだ。

 日本国内における1年間の着工建築物全体の木造率は現在45.5%に留まっており、非住宅建築物や中高層建築物のほとんどは木造以外の構造で建築されている。この木造率が増加すれば、大幅なCO2排出量削減につながるという。

 例えば、木造ビルの普及に向けて積極的な動きを見せている木造注文住宅建設会社「AQ Group」(旧アキュラホーム)がさいたま市西区に建設した純木造8階建て新社屋は、炭素貯蔵量は1,444t-CO2で、一般木造住宅に換算すると95棟分にも上るという。CO2排出量削減に至っては鉄筋コンクリート造と比較すると43%も削減されている。政府が掲げている温室効果ガスの削減目標とほぼ同じなのだ。

 中大規模の木造建築がこれまで普及しにくかった理由の一つに建築費の問題がある。コンクリートや鉄筋の建築物に匹敵する耐震性や耐火性能を得ようとすれば、接合部分に免震装置や金物などを多用しなくてはいけないため、どうしてもコストがかかってしまうのだ。しかしAQ Groupでは、この本社ビルを一般に普及しているプレカット材の軸組み工法を用いることで、この課題を解決。大手ゼネコンによる先導的な木造ビルと比較して約1/2、鉄骨鉄筋コンクリート造の約3/4と大幅に建築費を抑えられることを実証している。

 同社では今後、この本社ビルをプロトタイプと位置付け、そのノウハウを全国に展開し、全国の工務店やハウスビルダーと協力して普及促進に注力するという。ちなみに林野庁が公表している「令和4年度森林・林業白書」によると、5階建て以下の非木造建築物の床面積は合計で3,900万㎡とされており、㎡単価を40万円とすると、約16兆円の市場規模。

 環境問題だけでなく、ビジネスとしても大きな可能性を秘めている。

 一方、2024年1月には、地上18階、高さ84メートルの木造賃貸オフィスビルの建設工事が東京・日本橋で始まった。このビルは三井不動産と竹中工務店によるもので、2026年の竣工を予定している。完成時点では国内最高層の木造ビルになる見通しだが、2028年度に東京海上グループが高さ100メートルのビルを完成させる計画を進めている。さらに住友林業も、創業350周年を迎える2041年に、なんと高さ350m・地上70階の木造超高層建築物を建てる技術を完成させる計画を発表している。象徴となるビルはオフィスや住居、ホテルが入る予定で、街を森にかえる「環境木化都市」を目指す。AQ Groupが進める一般普及型の木造ビルとはコンセプトが異なるものの、木造ビルの建設競争が大手ゼネコンでも始まっている。

 AQ Group宮沢俊哉社長は本社ビルの完工に際し「普及型純木造ビルで、コンクリートジャングルを森に変える」と熱く語っているが、その目標もそう遠い未来の話ではないかもしれない。(編集担当:藤原伊織)

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