パナソニックの「存在感」を示す、本社直轄の部署

2021年11月23日 15:55

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パナソニックの「歩行トレーニングロボット」(画像: パナソニックの発表資料より)

パナソニックの「歩行トレーニングロボット」(画像: パナソニックの発表資料より)[写真拡大]

 今2022年3月期をパナソニックは「4.5%増収、27.6%の営業増益、27.2%最終増益」と大幅回復計画で立ち上がり、中間期開示と同時に「9.0%増収(7兆3000億円)、43.1%営業増益(3700億円)、45.4%最終増益(2400億円)」に上方修正した。22年4月に持ち株会社への移行を予定しているだけに、今期を好調で終えることは好材料となろう。

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 そんなパナソニックにあり表向きこそ決して目立たないが、この企業の「真の存在感」を示すような部署がある。持ち株会社化後、どんな立ち位置になるのかが気になる部署でもある。

 パナソニック本社直轄に、テクノロジー本部がある。「『くらしアップデート』を支えるコア技術を構築し、『より良いくらしと社会の実現に取り組む』」がミッション。例えば「歩行トレーニングロボット」「ライフレンズ」は、本部傘下の事業開発室で生まれている。

 歩行トレーニングロボット。身体機能の低下や転倒などの体験から歩行に不安を感じ始めた高齢者に対し、安全・効果的な歩行運動を提供するロボット(今年4月、介護・福祉施設や病院等にサービスを開始)。

 2015年に名古屋大学と連携し検討を開始。介護施設や高齢者と交流を深める中で、当初の「不便益や課題の支援(アシスト技術主体の)ロボティクス」から「運動負荷を与えるトレーニング機器の開発」に軸足を移し実現した。AIが歩行分析を行い、身体機能の変化を容易に可視化できる。安全に歩く力を維持する機器だ。

 ライフレンズ。介護施設向け介護業務支援サービス。前身は16年の「エアコンみまもりサービス」。エアコンの遠隔制御機能やバイタルセンサーによる介護施設のスタッフの負担軽減、異変の早期発見をサポートする。

 導入サイドのニーズを深掘りする中で、映像センサーを追加して20年に名称を変えた。AIセンシングカメラで居室内の状況、シートセンサーで安否・離床・睡眠を把握。スタッフに代わり24時間365日入居者を見守る。スタッフは必要時だけ映像で把握し、入居者の正確な状況をリアルタイムで確認することが可能になる。

 歩行トレーニングロボット、ライフレンズともに導入施設で好評価。前者では「トレーニングだけでなく、評価機器としても優れている」「簡易なので、継続利用の可能性が高い」「使い勝手の良いマシンであることが、体験すると納得いく」等。後者では「夜間巡視をしなくても、部屋の入居者の状況が分かる」「訪室で入居者を起こさず安否確認ができる」など。ちなみにある施設からは、夜間巡視にかかる訪室時間が91%削減できるという実証結果も届いている。

 今後の方向性について、担当者はこう噛み砕いた。

 「歩行トレーニングロボットは利用者の歩行速度を記録することで、高齢者の身体機能の変化をとらえる特徴がある。そのデータを活用することで、体調の変化や調子の崩れの予兆検知に応用できると考えている。ライフレンズでは夜間巡視の効率化にとどまらず、他の機器との連携や新センサーの開発により様々なソリューションの進化を目指す」。

 パナソニックのビジネス範疇は、まさに多様である。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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