ワンルームマンション専業:アーバネットの先々に覚える一抹の不安と、低PBR対策

2023年8月27日 08:17

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アーバネット開発物件の投資用ワンルームマンション「レジデンス文京春日」(画像: アーバネットコーポレーションの発表資料より)

アーバネット開発物件の投資用ワンルームマンション「レジデンス文京春日」(画像: アーバネットコーポレーションの発表資料より)[写真拡大]

 アーバネットコーポレーション(東証スタンダード。以下、アーバネット)。投資用ワンルームマンションの専業。8月3日の前6月期決算(今期計画)発表を機に362円まで上昇した。3日の終り値330円に対し4日は159万5900株(前日比11.95倍)と出来高を伴い買われた。そして本稿作成中の時価も、年初来高値を更新し高値ゾーンで推移している。

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 何故かに、興味を持った。確かに2023年6月期は「2.4%増収、9.3%営業増益、10.1%最終増益、2円増配19円配」であり今6月期も、「23.4%の増収(250億円)、2.9%の営業増益(25億円)、3.6%の最終増益(15億円)、1円増配20円配」計画。が前記のように12倍近い商いを伴い10%近く上昇する決算・今期計画とは考えづらい。

 そもそも私には「投資用ワンルームマンション需要」には、ある種の「?」があった。

 改めて、アーバネットなる企業を覗きこんでみた。

◆アーバネットのビジネスモデルは開発物件を一括してマンション販売会社に卸す「BtoB事業(約3割)」、法人・ファンド・個人投資家に直接販売する「BtoC事業(約7割)」。

◆年間10棟から15棟水準の開発を手掛けているが、その大方が「1戸平均約25m2、東京23区内、最寄り駅から徒歩10分以内」。

◆総務省統計局ではこう想定している。「全国的には人口が減少している。が東京23区は今後も2040年にかけて、人口流入が続くと予想される」。

◆投資用マンションのエンドユーザーは賃借人。総務省の見方は、こう推定される。周知の通り、東京都内では若い共稼ぎ夫婦が増えている。彼らは「(地方に比べ働き場が多く、給料も相対的に高い)東京で働きたい」、「かつ職住接近を希望する」。出産率が示す通り、「精々子供はもうけても1人。保育所の完備が必須」という傾向にある。

◆そうした指摘には、頷ける。東京流入組には、「高齢層が多い」ともされている。子育ても終え、リタイアメントのタイミングの高齢層は今後の生活を考える時に「地方・郊外の生活は不便。病院や交通網、飲食などの生活インフラが整った都心に」と考える。

 私が東京への人口流入に「?」を覚える理由も、そこにある。東京都の人口動態予測では2025年までは増加が続き1398万人に達するが、60年には1173万人になる。後期高齢者の自然減が進む結果だ。

 私はむしろ8月初旬の株価上昇を、テーマ性を帯びている「1倍割れPBR」への思惑買いではと感じている。対応策は、と問い合わせた。IR担当者から返ってきた答えはこうだった。

 「東証の要請する水準を下回っているPBRについて改善を図ることが弊社グループの経営上、重要な課題と認識している。今期は増収増益を目指すとともに、企業価値の向上のための様々な取り組みを積極的に進めていく予定」。

 様々な取り組みの現実化・表面化を見守りたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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