第1Q早々の上方修正:白銅に見る半導体不足と、その特異なビジネスモデル

2021年9月6日 16:40

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 9月2日、月刊投資雑誌のZOOMミーティングで白銅(東証1部)の角田浩司社長を取材する機会を得た。半導体・液晶製造装置向けを主体にする、特異な形の非鉄金属商社である。参加の打診を受け「是非」と即決したのは、今2022年3月期の通期計画を第1四半期開示と同時に早々に上方修正していたからである。

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 白銅が扱う非鉄の主要構成は前期の売上高比率でみると、「アルミニウム約66%/伸銅約13%/ステンレス約17%」。かつ特徴的なのは「1枚・1本・1g」から「希望の形状に加工」し、応じる点。

 前期の「6.2%減収、19.5%営業増益」に対し今期は、「22.4%増収、47.3%営業増益」計画で立ち上がった。だが8月1日に「8.3%の増収(520億円)、72.64%の営業増益(34億2000万円)、94円配」に大幅に上方修正した。

 修正に関し発表資料は「売上原価率減少、原材料市場動向(上昇)」を挙げていた。が、意地悪な私は総売上高の約4割が半導体製造装置向けであることを盾に、「期初計画の積算に際して、半導体製造装置市場の動向の見方が慎重に過ぎたのではないか」と質問した。

 角田社長の答えは、こうだった。「いや積算の段階の動向見通しはいまでも適切だったと捉えている。想定以上に需要が伸びたためだ」とした。

 またこうも聞いた。「非鉄市場の上昇が販価を押し上げて売り上げ増につながっているということだが、相場動向を見越した(相対的な)安値仕入れが功を奏したということか。先物市場等を活用した結果ではないか」。角田社長は、こう切り返した。「相場で商売をするな、と徹底している。あくまで商品で闘う」。

 白銅のビジネスの枠組みでもう1つ特徴的なのは、「白銅ネットサービス」の存在。ネットビジネスを積極化している点だ。1年365日24時間体制を敷いている。約1万3000口座(社)が活用している。1日の「見積依頼件数:約1万5000件/注文件数:約10000件」。

 ネットビジネスは着実に拡充している。取扱商品数は20年3月末の1万5500品目から、21年3月末には2万1200品目に増加している。角田氏は「Webによる見積件数を全体の90%まで高めることを目指す」とした。

 白銅(角田氏)が「IR活動を積極化したい」とするのは、「正直、広範な投資家への認知度が低いため」と裏表一体。「配当性向4割目標」を標榜しているがミーティング当日の終値の予想税引き後配当利回りは2.8%強。そして今期から詳細は省くが、株主優待策も導入した。

 不足する半導体。解消を担う半導体製造関連の一企業として注目し続けたい。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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