相場展望4月22日号 米国株: インフレ鈍化⇒再加速に転じる兆し⇒株価は割高感増す 日本株: 売りたい筋が発する「ニセの買い情報」に注意

2024年4月22日 09:25

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)4/18、NYダウ+22ドル高、37,775ドル
 2)4/19、NYダウ+211ドル高、37,986ドル

【前回は】相場展望4月18日号 米国株: 牽引役のハイテク・半導体株と、軟調な決算で売り展開 日本株: 「弱気相場」入りか?本日は売り優勢と予想

●2.米国株 : インフレ率が上昇に転じるリスクが増す、チャートはすでに崩れた

 1)半導体株が下落を牽引、米国株の戻り直しは困難が増すと想定
  ・米主要株価指数の下落率 4/19
    NYダウ       +0.56%高
    SP500        ▲0.88%安
    ナスダック総合    ▲2.05%安
    半導体株(SOX)   ▲4.12%安

  ・NYダウは4/19にプラスに転じたが、一部銘柄が好決算を発表した影響を受けたことによる上昇で、米国株全体への波及効果は期待できない。

  ・今まではSOX指数が、米国株高を牽引してきた。ところが今や、SOXが下落を先行。これでは、米国株の当面の回復は望み薄だろう。

 2)恐怖指数であるVIX指数は、投資家の不安心理を示す節目の20に接近している
  ・投資家の心理の委縮が続いていることを示唆している。

  ・VIX指数の推移   3/22   4/1    4/19
    米SP・VIX   13.06  13.45   18.71 
    日経・VIX    18.50  19.65   24.43

  ・日経平均のVIX指数はすでに20を超えている。

 3)米主要株価指数は史上最高値から下落に転じた
  ・米主要株価指数の下落率  
       NYダウ      SP500     半導体株(SOX)  
   (3/28) 39,807ドル (3/28) 5,254  (3/17) 5,165
   (4/19) 37,986   (4/19) 4,967  (4/19) 4,306
    下落幅 ▲1,821        ▲287       ▲859
    下落率 ▲4.57%       ▲5.46%     ▲16.63%

  ・半導体株指数(SOX)の下落が先行し、NYダウなどが引きずられて下落。

  ・米国株の上昇を牽引してきたSOXの下げ止まりが焦点になるとみる。

 4)チャートは崩れ、上昇支持線をも下回り、当面は底が見えない状況が続くと示唆

 5)米国のインフレ率は再上昇の兆しを示唆⇒高金利は継続⇒株価には負の影響と予想
  ・原油価格上昇の影響でエネルギー価格が上昇。雇用の底堅さで賃金上昇。
   ⇒ 消費意欲が増し、小売売上高が伸び、米経済は好調が継続。
   ⇒ 米個人消費支出(PCE)価格指数は再上昇(4/26公表予定)。
     米消費者物価指数(CPI)も上昇に転じた。
   ⇒ 米インフレの再加速の現実味が増す。
   ・したがって、FRBは高金利水準の長期化を継続するとみる。インフレ率の上昇に弾みが付く場合は、金利引上げさえ議論される展開を予想。
   ・米株価、特に長期金利の上昇で割高感を意識されるハイテク株には逆風が続く。FRBの金利引下げ期待で株価が上昇してきただけに、インフレの上げ止まりが確認できるまでは困難な時期が続くと予想する。

●3.根強いインフレ、金融安定への主要なりスク=FRB半期調査(ロイター)

 1)根強いインフレと高金利の長期化が金融安定化に対する主要なリスクとして挙げられた。

●4.インフレに忍耐強く対応、年末まで利下げしない可能性=アトランタ連銀総裁(ロイター)

●5.米経済好調、利下げの差し迫った理由ない、利上げも除外せず=NY連銀総裁(ロイター)

●6.米新規失業保険申請件数は21.2万件と横ばい、労働市場の堅調さ続く(ロイター)

●7.米住宅ローン金利が7%超え、昨年6月以来で最大の上昇=フレディマック(ロイターより抜粋

 1)米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)のデータによると、米国の30年固定住宅ローンの平均金利は4/18時点で7.10%と、1週間前の6.88%から上昇した。+0.22%の金利上昇は10ヵ月ぶりの大きさとなる。
 2)金利が上昇傾向にあるため、住宅の買い手は購入時期を見計らっているようだ。

●8.米ブラックストーン、1~3月純利益は前年同期の10倍の1,300億円、市場好転(日経新聞)

●9.テスラ、中国と米国でEVを値下げ、1~3月期の販売低迷と在庫膨張(ブルームバーグ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)4/18、上海総合+2高、3,074
 2)4/19、上海総合▲8安、3,065

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)4/18、日経平均+117円高、38,079円
 2)4/19、日経平均▲1,011円安、37,068円

●2.日本株:売りたい筋の「偽の買い情報」に注意

 1)4/18の日経平均上昇は「バフェット効果」を狙った偽情報の流布が要因
  ・バフェット氏が低利で円債を発行して、日本株を買増すとの話が広がった。そして、連想で商社などの銘柄が買われ、投資家心理が改善した。日経平均は▲300円超下落していたが、その情報が流れると+200円超のプラス圏へと浮上した。
  ・このバフェット情報は、4/19になると消し去られている。そして、4/19には反動として一時▲1,250円を超える大幅下落となった。
  ・この種の噂の情報を真に受けると、踊らされるれ損失を招くだけの場合が多い。相場が弱気に入ると、売りたい筋が買い煽る情報を意図的に流す場合がある。事実を確認してからでも、遅くはない。

 2)4/19の日経平均の下落を主導した半導体関連、4銘柄で下げ幅の▲42%を占める
  ・4/19の下落には、半導体関連の3銘柄株の下げが大きく寄与した。
  ・下げの寄与度:東エレク▲315円安、アドバンテスト▲66円安、信越化▲44円安
  ・主要な半導体関連銘柄 下落幅    下落率
     レーザーテク   ▲3,160円  ▲8.42%
     東エレク     ▲3,210   ▲8.74
     ディスコ     ▲4,330   ▲8.00
     ソシオネクスト  ▲ 299   ▲6.63

 3)チャートをみると、日経平均とTOPIXは崩れてきている

 4)投資主体別でみると、証券自己は4月2週も売りと2週連続
  ・証券自己は、年初から買い筋のメインをなしてきたが、4月1週に売り転換した。それが2週連続の売りとなった。
  ・年初からの買い主体は、外国人投資家(現物株)と証券自己の2大買い筋であったが、外国人投資家(現物株)のみとなった。
  ・日本株の買い筋が1つに減少し、証券自己が売り筋に転換したことで、相場にマイナスの影響を与える懸念が増した。

 5)日経平均が強気⇒弱気に転換か
  ・日経平均の推移
     3/22最高値 40,888円
     4/19    37,068
     下落幅   ▲3,820
     下落率   ▲9.34%

  ・日経平均の下落率は、米国主要株価指数の下落率を上回る
     NYダウ  ▲4.57%
     SO500   ▲5.4%

  ・新高値銘柄・新安値銘柄数の推移
              3/21  3/22   4/1   4/17  4/18  4/19
     新高値銘柄数   309  261    136    21    18   14
     新安値銘柄数    1    1    73   236    89   330

  ・新高値が激減、反して新安値が急増。相場の勢いが逆転した様子を示している。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・1893 五洋建設     業績大幅回復
 ・1942 関電工      業績上昇期待
 ・3107 ダイワボウ    業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。http://note.com/soubatennbou

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