ベテルギウスに残された時間はあと300年か? 東北大らの研究

2023年7月20日 15:47

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VERA水沢観測局から撮影されたオリオン座。(画像: 国立天文台)

VERA水沢観測局から撮影されたオリオン座。(画像: 国立天文台)[写真拡大]

 オリオン座の赤色巨星ベテルギウスは、2019年末に大幅に減光し、超新星爆発の前兆と騒がれたが、直ちに超新星爆発につながる減光ではなかった。その後の研究で、ベテルギウスは現在ヘリウムの消費段階にあり、それがすべて核融合で消費され尽くすまでの間、すなわち数万年間は、超新星爆発は起きないとの結論に至っている。

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 だが厳密には、超新星爆発までに残された時間を正確に言い当てることは不可能というのが、専門家の正直な見解のようだ。

 一方で査読前の未公開論文ながら、新しい説が科学者たちの間で波紋を呼んでいる。それによれば、ベテルギウスは既にヘリウムを消費し尽くして炭素の消費段階にあり、炭素を消費し尽くすまでに残された時間は300年未満で、その数十年後には超新星爆発を起こすという。この論文は、東北大学の科学者を中心とする国際研究チームによるもので、現在オンラインプレプリントサーバーarXivで入手可能だ。

 これによれば、ベテルギウスは従来考えられていた直径よりも大きいという。恒星は核融合で水素を消費し尽くすと、ヘリウムの核融合段階に移行し、赤色巨星へと姿を変える。ベテルギウスでは既にヘリウムも消費し尽くされ、炭素の核融合段階にあるため、さらに星の膨張が進んでいると考えられるためという。

 恒星でヘリウムの核融合が始まってから、死に至るまでの時間は数万年、炭素の核融合が始まってから、死に至るまでの時間は数千年とされるが、この論文ではベテルギウスで炭素が燃え尽きるまでの時間は300年未満と予測する。さらにそれから数十年以内に超新星爆発に至ると予測している。

 ベテルギウスの直径の見積もりが、科学者間で大きく異なる理由は、赤色巨星は太陽のような主系列星と異なり、星の外周の輪郭が明瞭でないためだ。赤色巨星では最外周部は直径数光年にも及ぶガス層に覆われ、そこを通して星の輪郭を見るため、輪郭を明瞭にとらえることが困難なのだ。

 結局のところ、ベテルギウスに残された時間はその直径がいかほどなのかで決まるのだが、そこで科学者たちの意見が分かれ、正解は誰にも分からないらしい。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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