市民参加で宇宙線と雷の関係を解明へ 京大らの研究

2023年7月11日 08:43

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宇宙から降り注ぐ宇宙線の空気シャワーと雷雲の相互作用で、電子が加速されてガンマ線が発生する様子と、それが雷放電のトリガーになる可能性を示す模式図(イラスト製作:ひっぐすたん) (画像: 京都大学の発表資料より)

宇宙から降り注ぐ宇宙線の空気シャワーと雷雲の相互作用で、電子が加速されてガンマ線が発生する様子と、それが雷放電のトリガーになる可能性を示す模式図(イラスト製作:ひっぐすたん) (画像: 京都大学の発表資料より)[写真拡大]

 京都大学、金沢大学、岐阜大学、名古屋大学、早稲田大学などの科学者らによる研究チームは、宇宙から地上に降り注ぐガンマ線を、市民サポーターと連携し観測を推進する「雷雲プロジェクト」を立ち上げ、金沢市の5地点で雷雲から放射されたガンマ線の検出に成功した。これまで地球単独の気象現象と考えられてきた雷の発生が、宇宙と関係があることを明らかにするかもしれない画期的な研究だ。

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 京都大学の発表によれば、このプロジェクトは市民サポーターの自宅に小型の放射線モニタ「コガモ」を設置することで観測網を構築し、雷雲から地上に降り注ぐ「雷雲ガンマ線」を多地点で観測する取り組みだ。2021年12月30日に、金沢市の5地点で雷雲から放射されたガンマ線の検出に成功したという。

 雷の発生メカニズム解明には、雷に関係する電子とガンマ線の挙動を調べる必要がある。だが大気中では電子はあっという間に吸収され、雷放電の鍵になる相対論的な電子を地上で観測するのは極めて困難だ。またガンマ線も数百メートル程度で大気に吸収されてしまう。

 そこで研究チームは、ボタン1つで作動する小型放射線モニタ「コガモ (Compact Gamma-ray Monitor = CoGaMo)」を開発。冬季に雷雲が多数到来する金沢市周辺の市民サポーターの自宅の庭にコガモを設置することにより、約70台の大規模観測網を構築したのだ。

 2021年12月30日未明に金沢市中心部で雷雲ガンマ線を出す雲を複数のコガモ検出器が検出した。その後、午前4:08頃に雷放電が発生し、同時に雷雲ガンマ線が途絶していることが判明。これは雷により雲の中の電荷が中和されて電場が消え、電子加速が発生しなくなったことにより、ガンマ線放射が停止しためだ科学者らは推測している。

 雷のトリガーが、雷雲内部に起因するものなのか(つまり雷が地球単独の現象なのか)、はるか彼方の宇宙からやってきたガンマ線の影響なのかを明らかにするには、今後のデータの蓄積と解析を待つ必要がある。だがガンマ線発生が雷放電発生と深い関係を持つことは間違いなさそうだ。なお今回の研究成果は、7月3日に米国の国際学術誌「Geophysical Research Letters」に掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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