【どう見るこの株】日本空調サービスは戻り試す、23年3月期営業・経常増益予想、24年3月期も収益拡大基調

2023年3月22日 11:14

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

 日本空調サービス<4658>(東証プライム)は空調を中心とする総合建物設備メンテナンスサービスを展開し、病院を中心に安定した年間契約を主力としている。長期ビジョン「全てのステークホルダーの幸せ向上」の達成に向けて、3月14日には「マルチステークホルダー方針」を策定・公表した。23年3月期は主力のメンテナンスサービスが堅調に推移して営業・経常増益(当期純利益は前期計上した投資有価証券売却益の剥落で減益)予想としている。第3四半期累計の進捗率は低水準の形だが、下期の構成比が高い傾向を考慮すれば会社予想の達成は可能と考えられる。さらに積極的な事業展開で24年3月期の収益拡大基調を期待したい。株価は1月の昨年来安値圏から切り返している。地合い悪化の影響で一旦反落したが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■空調を中心とする総合建物設備メンテナンスサービスを展開

 1964年設立(名古屋市)で、空調を中心とする総合建物設備メンテナンスサービスを展開している。事業部門は、建物の空調を中心とする設備システム全般に対する点検・整備・修理・交換等のPM(Preventive Maintenance)部門、メンテナンスサービスと日常の維持管理を合理的に組み合わせた統括マネジメントのFM(Facility Management)部門、空調設備や給排水衛生設備等の既設設備に対するリニューアル工事等のRAC(Reform and Construction)部門としている。

 22年3月期の売上高構成比はPMが38%、FMが30%、RACが32%だった。収益特性としては下期の構成比が高い傾向がある。契約形態別で見ると年間契約売上が約4割を占めている。病院を中心に安定した年間契約を主力としており、景気リスク分散を考慮して製造工場等への多業種展開も推進している。また、病院や製造工場など維持管理に高度な技術力が必要で参入障壁の高い特殊な環境を有する施設の売上高比率が約7割に達している。さらに取引拡大に向けた新たな切り口として、製造工場等をターゲットとした自家消費型太陽光発電システムの導入、医薬品製造工場等の受注範囲拡大に向けたバリデーション・トータルサポートの展開を推進する方針だ。

 特徴・強みとしては、従業員の8割以上が技術系(22年9月末時点で連結ベース従業員数3140名のうち技術系が2530名)で体系的教育カリキュラムなど技術力向上の仕組みを構築していること、国内47都道府県および海外6カ国(22年9月末時点で国内83拠点、海外10拠点)に展開していること、高い技術力・ソリューション提案・トータルサポートによって維持管理サイクル(プラン作成・計画立案~保守・維持管理~設備診断・評価~ソリューション提案~メンテナンス・リニューアル)のどの段階からでも自社での対応が可能なこと、独立系企業のためメーカーの制約を受けることなく顧客施設内の多種多様な設備に対応できることなどがある。

■成長戦略

 同社は長期ビジョンに「全てのステークホルダーの幸せ向上」を掲げ、ESG(環境・社会・ガバナンス)を意識した経営を推進する方針としている。

 中期経営計画(19年2月策定・公表、19年4月~24年3月を対象期間とする5カ年計画)では、経営目標値に最終年度24年3月期の売上高550億円、営業利益30億円、経常利益31億円、親会社株主帰属当期純利益19億円、1株当たり当期純利益(EPS)54円17銭を掲げている。また資本効率を意識した経営指標として自己資本当期純利益率(ROE)10%維持、海外展開の目標指標として営業利益における海外比率5%を目指すとしている。株主還元については配当性向50%を維持する方針としている。

 経営戦略としては、高度な技術力が必要とされる特殊な環境を有する施設に対する高品質サービスの提供および同社の強みを生かしたワンストップサービスの強化、全都道府県に展開している拠点網を活用した全国展開企業との取引拡大、海外における新規顧客開拓(海外進出日系製造工場等)と海外拠点の早期収益化、人的資源のさらなる充実に向けた各種プロジェクトの推進と従業員満足度の向上、高品質サービスの維持および一層の強化に向けた熟練技術者の養成強化、グローバル経営推進に向けた外国籍従業員の積極採用、持続的に企業価値を向上させるための経営の実践などを掲げている。

 そして29年3月期に向けた主要KPIとして、特殊な環境を有する施設の売上高比率80.0%以上、海外営業利益比率10.0%、従業員満足度80.0%以上、技術力指数22.0pt以上、外国人従業員数200名以上、EPS60円00銭以上、ROE10.0%以上維持を目指すとしている。

 なお同社資料によると、国内の空調・熱源システム市場は2.2兆円程度と推計され、このうち同社がターゲットとする市場(メンテナンスの主戦場となる既設案件)は1.5兆円程度と推計されている。また600床以上の病院における同社の市場シェア(22年3月期末時点、病床数ベースの受託割合)は11.7%となっている。

 3月14日には長期ビジョンの達成に向けて「マルチステークホルダー方針」を策定・公表した。企業経営において多様なステークホルダーとの価値協創が重要となっていることを踏まえ、マルチステークホルダーとの適切な協業に取り組む方針としている。

■23年3月期営業・経常増益予想、24年3月期も収益拡大基調

 23年3月期連結業績予想は売上高が22年3月期比4.2%増の520億円、営業利益が10.8%増の29億円、経常利益が7.1%増の30億円としている。親会社株主帰属当期純利益は前期計上の特別利益(投資有価証券売却益13億91百万円)が剥落して32.7%減の19億円としている。配当予想は28円(第2四半期末14円、期末14円)としている。22年3月期との比較で13円50銭減配の形だが、22年3月期の41円50銭には特別配当13円50銭を含んでいるため、普通配当ベースでは22年3月期と同額となる。予想配当性向は50.7%となる。

 主力のメンテナンスサービスが堅調に推移して営業・経常増益予想としている。事業別売上高の計画はメンテナンスサービス売上高が3.7%増の350億円、リニューアル工事完成工事高が5.5%増の170億円としている。

 第3四半期累計は売上高が前年同期比3.1%増の352億21百万円、営業利益が8.9%減の14億65百万円、経常利益が6.3%減の16億42百万円、親会社株主帰属四半期純利益が51.9%減の10億16百万円だった。

 売上面では、リニューアル工事が半導体・部材不足に伴う工期延伸や案件先送りの影響を受けたが、主力のメンテナンスサービスが堅調に推移した。利益面は原材料価格高騰や人件費増加などの影響で減益だった。

 なお四半期別にみると、第1四半期は売上高が104億20百万円で営業利益が1億06百万円、第2四半期は売上高が114億54百万円で営業利益が5億67百万円、第3四半期は売上高が133億47百万円で営業利益が7億92百万円だった。

 第3四半期累計の進捗率は売上高が67.7%、営業利益が50.5%と低水準の形だが、下期の構成比が高い傾向を考慮すれば通期会社予想の達成は可能と考えられる。さらに積極的な事業展開で24年3月期の収益拡大基調を期待したい。

■株価は戻り試す

 株価は1月の昨年来安値圏から切り返している。地合い悪化の影響で一旦反落したが、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。3月20日の終値は703円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS55円22銭で算出)は約13倍、今期予想配当利回り(会社予想の28円で算出)は約4.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS584円08銭で算出)は約1.2倍、そして時価総額は約252億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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