吉備高原の安定的な地盤 過去にも存在 災害に強い地域検討に新知見 岡山大ら

2021年8月1日 07:39

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西南日本の白亜紀(1億1000万年前)以降の古地磁気極移動曲線。(画像: 岡山大学の発表資料より)

西南日本の白亜紀(1億1000万年前)以降の古地磁気極移動曲線。(画像: 岡山大学の発表資料より)[写真拡大]

 日本列島はプレートの境界に位置するため地殻変動が激しく、地震や火山の噴火などが頻繁に発生する。その日本列島の中でも地殻変動の影響を受けにくく安定的な地域を検討することが、防災上重要な課題とされている。岡山大学と愛知大学の共同研究グループは、その候補の1つである吉備高原について磁気学の観点から分析を行ってきたが、7月29日、吉備高原およびその周辺地域が、1億1000万年前から4000万年間安定的であったことが判明したと発表した。

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 地層や岩石には、有史以前の地球で起きた現象についての様々な情報が残されている。その中の1つが、岩石の中の磁気が地殻変動によって動いた履歴である。岩石の磁気は形成時には北の方角を向いているが、地殻変動で岩石が動くとその方角も動く。

 1つのプレート内には様々な年代の地層や岩石が分布していて、磁気の方角も年代による推移を反映している。そのため、それらを年代順に並べると磁気が移動した曲線を読み取ることができ、大陸移動や地殻変動の歴史を知ることができる。だが吉備高原を含む西南日本に関しては、このような研究が進められておらず、地質学的な知見は得られていなかった。

 今回の研究では、吉備高原の南西部にある稲倉層と呼ばれる地層の磁気情報を分析。稲倉層は1億1000万年前の前期白亜紀に堆積した岩層である。その結果、7000年万前に大規模な大陸移動が発生するまでは地殻変動の観点からは安定的であったと判明した。

 吉備高原は兵庫県西部から広島県中部にかけて広がる地域で、3400万年前から地質学的に安定であったことはすでに知られていた。その要因として、吉備高原が深さ約30キロメートルもの安定的な岩盤を有することも明らかになっている。今回の研究は、吉備高原が地質学的に安定的であることをさらに裏付けるものである。

 防災上のリスクの観点から、東京にある首都機能を分散もしくは移転させるべきであるという議論がこれまで頻繁になされてきた。今回の研究のような知見が集積することで、首都機能に関する適切なリスク低減が行われることが期待される。

 今回の研究成果は「Earth, Planets and Space」誌のオンライン版に6月22日付で掲載されている。

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