ナラ枯れをもたらす昆虫 北海道で初めて発見 森林総合研究所

2021年1月5日 08:45

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北海道で初めて発見されたカシノナガキクイムシ(森林総合研究所の発表より)

北海道で初めて発見されたカシノナガキクイムシ(森林総合研究所の発表より)[写真拡大]

 甲虫による多量の穿孔で、ナラ類やシイ、カシ類の樹木が大量枯死するナラ枯れ。1980年代以降、日本各地で発生し、「カシノナガキクイムシが病原菌を伝播することにより起こる、樹木の伝染病の流行」という発生原因が特定されているものの、依然としてナラ枯れの発生地域は拡大傾向にある。

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 そんな中、森林総合研究所が12月25日、ナラの木を枯死させるカシノナガキクイムシを北海道内で初めて捕獲したと発表した。19年に青森県で同種によるナラ枯れ被害が急増したことから、北海道への侵入が危惧されていたが、現実のものとなった。発見に伴い、道内におけるナレ枯れ被害の発生が懸念され、関係者は防除体制の構築に急いでいる。

 林野庁によると、カシノナガキクイムシは、甲虫目ナガキクイムシ科に属し、主に本州や四国、九州に分布する。シイ類やカシ類の材内を穿孔し、体内で共生するナラ菌を寄生させてナラ枯れ被害をもたらす。穿入した穴から、大量の木屑を排出するのが特徴だ。

 1980年以前も生息していたが、同種の生息に適した大径木が各地に増えたことから、近年のナラ枯れ被害は増加の一途を辿っている。さらに近年は、一昔前に燃料として活用されていた枯死木が放置されるケースが増え、被害拡大に歯止めが掛からないでいる。

 ナラ枯れ被害は、本州や四国、九州など各地で広がり、とりわけ東北地方で被害地域が北上。青森県では2020年、過去最多となる4万1252本の被害木が発見され、白神産地の世界遺産緩衝地域内でも初めて被害が見つかった。同種の北海道への侵入が危惧されたことから、森林総合研究所は、北海道の最南端地域で、フェロモントラップを使い、同種の生息状況を調べた。

 調査条件は、松前、福島、知内の3町にある20カ所の森林に、同種をおびき寄せられるフェロモン剤を入れた捕獲器を1基ずつ設置するもの。設置は、2020年7月初旬に行い、1カ月後に捕獲状況を調べた。

 すると、調査対象の20カ所のうち、4カ所で5個体(オス2体、メス3体)が捕獲された。捕獲個体のうち、3固体は海岸から1~2キロ離れた森林で捕獲された一方、残りの2個体は、海岸に近い場所で見つかった。侵入の時期や経路については不明で、同研究所は、遺伝子解析などを交えながら、道内における同種の由来を調べる意向を示している。(記事:小村海・記事一覧を見る

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