IHIとNEDO、世界初の海流発電に成功 新エネルギー実用化に向け前進

2017年8月26日 11:47

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準備作業の様子(写真: IHIの発表資料より)

準備作業の様子(写真: IHIの発表資料より)[写真拡大]

  • 実証試験の装置構成

 IHIと新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は25日、世界初となる100kW規模の海流発電の実証実験を終えたと発表。黒潮海域にて最大で約30kWの発電出力を得たほか、水中における姿勢制御システムの性能確認や工事の方法など、実用化に向けたデータ取得を果たした。

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 日本の領海・排他的経済水域は世界でも有数の広さとなっており、この海域で再生可能エネルギーを利用できれば、温室効果ガスの排出を抑えつつ多大なエネルギーを得られる。

 特に黒潮のような海流は1年を通して安定しているため、巨大なエネルギーを恒常的に利用できる見込みもたつ。太陽光発電よりも安定した発電が可能になるかもしれない。今回は、そのような期待を高める実験結果が出たといえる。

 実験は8月の半ばに7日間、鹿児島県口之島沖、トカラ列島付近の黒潮流域中で実施。強く、変動が少ない海流エネルギーを得るため、水中浮遊式海流発電システムを備えた実証機「かいりゅう」を用いた。

 この「かいりゅう」を水深30~50mに浮遊させ、自動制御システムにより姿勢や深度を調整しながら発電出力の確認、発電性能などに関する試験を行った。なお、7月25日からの7日間に行われた、同機を船舶で曳航して挙動を確認する模擬的な試験では、100kWの発電出力が得られた。

 水中浮遊式海流発電システムにはいくつもの特徴がある。例えば、安定した海流のエネルギーを長い間連続して利用することで、年間で60%以上という高い設備利用率での発電ができる。

 また、海底につなぎとめて海中浮遊させるので、1,000m級の大水深域にも対応。波の影響を受けず、船舶の運航に支障を及ぼすこともない。広い海域で設置が可能だ。保守整備をする際は、浮力調整をして海上に浮上させることで、簡単に修理やメンテナンスを行える。2020年以降の実用化を目指し、IHIは今後も研究開発を進める予定。(記事:小椋恒示・記事一覧を見る

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