アパレル企業のWeb責任者が見る「2018年。3年後のWeb戦略」―UNITED ARROWS LTD.―【前半】

2015年1月1日 10:52

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記事提供元:アパレルウェブ


ユナイテッドアローズ事業支援本部デジタルマーケティング部部長 相川慎太郎氏

 スマートフォンの普及によりオムニチャネル化が加速した昨今。次のWebトレンドはすぐにやってくる。ウェアラブル、IoT、ビッグデータなど、リアルとバーチャルの融合が大きなうねりとなり迫ってきている。1年後の動向すら掴みづらいなか、"3年後のWeb戦略"について、各社ウェブ事業責任者にインタビューを敢行した。第2回目はUNITED ARROWS LTD. ONLINE STOREを立ち上げたデジタルマーケティング部部長の相川慎太郎氏に聞いた。

 ユナイテッドアローズ社の社是は「店はお客様のためにある」だが、店舗だけではなく店を持たないECでもその精神はしっかり根付いている。

 「お店でできていることはすべてWEBでもやっていく」「お客様一人一人にマッチしたパーソナライズ化を極めていく」――ブレることのないユナイテッドアローズ社のWeb戦略を通じて、「店」と「お客様」という最も大事な2つのキーワードとしっかりと向き合っている。

店舗とECの相乗効果

―まずはウェブ担当者になったきっかけを教えてください。

 実は2005年にZOZOTOWNの店長募集に手を挙げたのがきっかけなんですよね。私は新卒入社なのですが、物流、システム、店舗開発を経ており、その次がZOZOTOWNの店長でした。販売経験もなかったので、まさか採用されるとは思っていませんでした。ですが、当時からamazonなどのECを利用しており、ECに大きな可能性を感じていました。

 ただ、最初はまったく売れなかったですよ(笑)。売れなかったので事業部から出品してもらう商品もアウトレットものが多かったですしね。その後、2009年に自社ECサイトとして「UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE」を立ち上げました。

―「UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE」も最初から順調ってわけじゃなかったんですよね。

 はい、自社ECも売り上げが上がりませんでした。周囲から「ZOZOTOWNだけでいいんじゃないの?」という声もありましたが、ECモールができない自社ならではの店舗連携に愚直に取り組んでいたら売り上げがついてきました。この店舗連携は当初から考えていました。ECで買い物したらハウスカードのポイントが貯まる仕組みも最初からありましたしね。アパレルウェブさんにもウェブプロモーションで支援してもらっていますが、それと同じく店舗会員からEC会員になってもらうために、リアルからの集客を強化していました。

―御社とはセミナーなどを一緒にやらせてもらっていますが、その中でも衝撃的だったのが「店頭とECの相乗効果」についてのデータ分析でした。どのような経緯で実施することになったのですか?

 当時はよくある話でしたが、「EC購入者は店頭で購入していないはず」という心配が各方面からありまして、「店頭とECのカニバリゼーション」についてのデータ分析を社内CRM担当に依頼した結果が、「店頭とECの相乗効果」でした。真逆でしたね。さらに店舗がない地域のECが売れないということも分かった。ECチームとしても店頭との共存が裏付けられて一安心でした。

 アパレル企業様のECサポートをしている私たちとしても、とても勇気づけられるデータですね。


ユナイテッドアローズ社が実施したデータ分析。「店頭/ECを併用するお客様」の店頭購入額は、「店舗のみ利用のお客様」による店頭購入額と比べて2.5倍という結果が出た。

ECにおけるユナイテッドアローズの組織力

―他社の経営者層の多くが、御社の「組織力」について興味を持たれていると聞きます。ECにおける組織について教えていただけますか。

 当社のEC運営における組織体制は、2005年EC開始当初から変わっていません。

 そんな中で、ECチームは各ブランド事業部(ユナイテッドアローズ、ビューティ&ユースなど)の中に運営するチームを置いていました。実店舗とECは並列な形で、「各ブランド事業部長管轄でECが扱われるのがベストだ」と思っています。

 当初は全社統括内の事業部としてECチームを独立させるべきという声もありましたが、「在庫と売り上げの責任は、絶対に事業部に紐付けるべき」だと思っていたので、独立した事業部というのは個人的にも強く反対しました。

 専門事業部にすると、各ブランド事業部との連携が弱くなるはずなので、事業部の中にECチームを配置させることに強いこだわりを持っていました。それは今のUNITED ARROWS LTD. ONLINE STOREの前身である「LICLIS(リクリス)」(2008年2月閉鎖)で、ECを独立事業部制にした際に、各ブランド事業部との連携が上手くいかないことを目の当たりにしたことが大きな理由の1つでした。


UNITED ARROWS LTD. ONLINE STORE

-相川さんの部署であるデジタルマーケティング部の役割を教えてもらえますか。

 デジタルマーケティング部では、EC、WEB、クリエイティブを担当していますが、部の方針としては「各ブランド事業部ではできないこと"だけ"をやる」という考えです。事業部でできることは極力事業部でやったほうが良く、私たちはあくまでバックアップ機能に徹する。それがむしろ組織としての強みであると思っています。

―なるほど。事業部との連携や役割分担について強いこだわりを感じますね。ちなみに各事業部のECチームの構成ってどれくらいいらっしゃるんですか?

 多いブランドで6人。少ないブランドで1~2人ぐらい。商品の投稿や、コンテンツの制作・更新などがおもな業務になっていますね。

―新しい施策を始める時はどうやって事業部と連携していくのですか?

 まずは各ブランド事業部にプレゼンします。事業部によってコンセプトや戦略が違うので、必ずしもすべての新施策に全事業部が参加してもらうことが前提ではありません。まずは手を挙げたブランドと一緒に実績を作ってから、各ブランドに適した形で、全社に波及させるという流れが多いですかね。

後半に続く

※この記事はアパレルウェブより提供を受けて配信しています。

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