自炊代行に違法判決 だが電子化の波で著作権を守る難しさも

2014年11月5日 08:34

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記事提供元:エコノミックニュース

作家らが自炊代行サービスを行う業者を訴えた裁判で、10月22日、著作権侵害を認める2審判決が下された。業者は複製の差し止めと70万円の賠償を命じられた。

作家らが自炊代行サービスを行う業者を訴えた裁判で、10月22日、著作権侵害を認める2審判決が下された。業者は複製の差し止めと70万円の賠償を命じられた。[写真拡大]

 「自炊代行」サービスをめぐる裁判の2審判決が10月22日に知財高裁で下された。原告側である作家の浅田次郎さんや東野圭吾さんら7人の訴えが1審に引き続き認められるかたちで、富田善範裁判長は「自炊代行サービスは著作権を侵害している」と述べ、東京都内の自炊代行業者の控訴を棄却した。富田裁判長は、「業者側による複製は私的複製の範囲を超えている」として、業者に複製差し止めと賠償額70万円の支払いを命じた。

 自炊とは、出版物である書籍や雑誌などを個人が自ら電子書籍化する作業を指す。紙の本を切断・分解してスキャナーで読みとり、電子データ化することで、パソコンやタブレット、スマートフォンなどで読むことができるようになる。持ち運びや保管にも便利な電子書籍の人気は上昇しており、自炊のニーズも高い。著作権法では、書籍物の持ち主自らが個人的に利用するために自炊を行うことは「私的複製」として認められている。

 しかし、機材の準備や手間がかかることから、作業を請け負う自炊代行業者の利用が拡大。書籍物の2次利用が広がれば、データの不正使用や違法複製などの行為が引き起こされる可能性が高まる。自炊処理後の書籍物やデータは業者が責任をもって廃棄処分するとしているが、著作権を持つ作家からしてみれば、簡単に複製できるデータが作成されること自体、強い不安を感じる根拠となる。

 著作権違法行為と判決を受けた自炊代行サービスだが、所有する書籍の電子化を求める読者がいることもまた事実だ。電子書籍のニーズ拡大のためにも、自炊代行サービスの存続を求める声があり、作家ら側も、書籍の2次利用を違法性なく広げていくための仕組みを整備していくことが必要だという考えを示している。

 著作権2次利用の申請先を一括して引き受ける管理システムの構築や、出版社を介して書籍物のデータ化を行うという案も出ているが、今のところ進展はないようだ。読者のニーズに応えながら書籍の電子化ルールを築いていくためには、自炊代行サービスと作家、出版社の間で前向きな話し合いを持つ必要もあるだろう。(編集担当:久保田雄城)

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