【編集長の視点】5年来IPOの「土(つち)偏」銘柄は「第2の一建設」を期待してアプローチも一考余地=浅妻昭治

2013年3月18日 10:47

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記事提供元:日本インタビュ新聞社

<マーケットセンサー>

  またまた?とお思いになるかもしれないが、当コラムでまたも「土(つち)偏」セクター株を取り上げる。土地持ち会社、不動産会社のことである。昨今の株式市場では、この「土(つち)偏」銘柄が、物色範囲を広げて上げては下げ、下げてはその倍は上げるほどの大賑わいとなっているので、土地勘が刺激されてついつい百万言の費やしたくなってしまう。しかも、主力株全般の上値が重くなって、銘柄セレクトに困ったときには、「アベノミクス」関連株、TPP(環太平洋経済連携協定)関連株として、必ず買い直されるほどの追っかけファンも固定しつつあるようだからなおさらだ。

  この不動産株では、つい10年ほど前には「大京前・大京後」といわれていたことを憶えておられる投資家も少数派になったと推察している。この「大京前・大京後」とは、現在、昨年来高値を追っている大京 <8840> が、2004年に産業再生機構(当時)に経営再生支援をした以前と以後の過渡期を指している。この以前では、大京を含めて既存の不動産会社の多くが、例の資産バブル景気下、事業用土地はもちろんゴルフ場用地、リゾート用用地などまでをしこたま抱え込んで不稼動化、過大な債務となって不良債権として経営を圧迫していた。

  これに対して、「大京後」とは、この大京の経営支援要請前後に会社を設立し株式を上場した不動産会社を指す。大京を反面教師として、第1次住宅取得者向けに安価な分譲マンションを供給することを経営方針に掲げており、不良債権処理の後遺症が続き、株価も低位低迷した既存会社とは対照的に高値評価が続いた。

  ところがである。この「大京後」の不動産会社も、実は、バブルに踊ったことがいまでは明らかになっている。大京は、資産バブルのなかで高成長を遂げたが、「大京後」の不動産会社も、そのあとの「REIT(不動産投信・リート)バブル」が引き金になって高成長・高株価を示現したのである。

  これを端的に表したのが、2008年2月に東証第2部に新規上場し、同年11月に民事再生手続きを申立てて倒産したモリモトであった。資産バブル当時に仕入れていた保有土地にワンルームマンションを建設・販売して高成長、株式上場を実現した。ところが同社の収益の大部分は、自ら設立・運用したリートに自社物件を組み入れたことに負っており、2007年から米国でサブプライムローン問題への懸念が強まったことによる国内不動産不況の悪化ともに、商品在庫が膨らんで経営破たんしてしまったのである。

  「大京後」の不動産会社で、経営破たんしたのは同社のみにとどまらない。2008年8月に民事再生手続きを申立てをしたアーバンコーポレーションが、店頭登録したのが1996年9月、東証第1部に指定替えされたのが2002年3月であった。また2009年2月に会社更生手続きを開始した日本綜合地所は、同じく1999年に店頭登録し、2003年に東証第1部に指定替えされた。この2社は、創業者社長が、いずれもかつて大京の社員であった経歴を持ち、大京を反面教師としながらも、なおバブルの魔の手中に落ちてしまった結果に甘んじた。

  誤解されないようにお断りしておくが、この「大京前・大京後」を引き合いに出してバブルの歴史を振り返ったのは、決して現在、大活況を続ける「土(つち)偏」銘柄に冷や水を浴びせかけ、弱気論を主張する意図があってのものではないということである。それより、現在の「土(つち)偏」銘柄の活況が、来るべく次のバブルを予兆してその初動段階にあるのか、本当にバブルが再来するのか、再来するとしてそのバブルはどのような様相を帯びるのか興味があるということに尽きる。「アベノミクス・バブル」なのか、それとも次期日銀総裁が政策誘導する「黒田バブル」となるのか、お手並み拝見としたいのである。

 目先の投資戦法としても、今後は「アーバンコープレーション前・アーバンコープレーション後」、「日本綜合地所前・日本綜合地所後」に注目したいということである。両社が破綻した前後の2008年以後に株式を新規公開(IPO)した不動産会社は、11社にのぼる。モリモトは、前述したようにすでに倒産・上場廃止となったが、残り10社のうち、2009年12月にIPOの一建設 <3268> (JQS)と2011年3月にIPOのアイディホーム <3274> (JQS)は、今年11月に同業6社とともに経営統合することに合意し、さらに一建設が、今年3月12日に好決算と大幅増配を発表してストップ高、上場来高値を更新したことが加わり高人気化した。

  このうち一建設は、IPO時には公開価格2300円と同値で初値をつけ、上場来高値3880円から同安値1482円まで大きく調整、下値もみ合いが続いていたのが、ここにきて連日のストップ高で棒上げしているのである。同社とアイディホームを除く8社には、「第2の一建設」を期待して注目が集まろうというものである。(本紙編集長・浅妻昭治)(執筆者:浅妻昭治 株式評論家・日本インタビュ新聞 編集長)

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